クリニックで行う性病検査は、問診から始まり視診・触診とあらゆる疾患の可能性を想定して専門医が診断へ導くので、症状がなくても受けられます。
性病にはいろいろな種類があります。感染の可能性が低いカンジダなどは、診察と症状である程度疾患名を診断しすぐに治療ができるものもあります。
クリニックで行う検査といっても、採取した検体をリアルタイムで診断する医療機関は多くありません。
医療機関内での顕微鏡検査は、時間的な手間・設備・人手が必要になるからです。
過去には、どの医療機関でも顕微鏡が設置され、膿や分泌物から菌体を特定して診断することも行われてきました。
医療機関では、性病検査キットと比較して早く検査結果が出ますが、リアルタイムでの検査結果を得ることが難しく、個人情報保護の関係上通院しなければ検査結果を受け取れないことが欠点です。
性病の種類により、以下の方法に検査方法は分かれます。
尿検査 |
クラミジア、淋病、マイコプラズマ・ウレアプラズマ |
血液検査 |
梅毒、HIV、ヘルペス、B型・C型肝炎など |
分泌物検査 |
トリコモナスなど |
直接菌体やウイルスを検出できない場合は、抗体の測定を行います。
梅毒のSTS検査のように定量検査ができるものもあり、治癒の判定に有用な検査もあります。
検体採取が医療機関では正確に行えるため、偽陰性の可能性は性病検査キットを使用して自ら実施するよりもはるかに低、信頼度が高いと言えます。
検査時には必ずウインドウピリオド(潜伏期間)を考慮する必要があります。
感染の可能性から3か月経過を待たなくても検査が受けられるというメリットがある HIV1-RNA定量検査(リアルタイムPCR法)ですら、感染機会から10日~14日期間を開けてからの検査が必要です。
問診で感染機会を患者様から伺って、検査の必要性やそのタイミングを図って検査を行うため、見逃しや検査漏れが少ないのが自分で行う性病検査キットと医療機関での性病検査の大きな違いです。
性病を疑いましたら医学的専門知識がある医師が行う、医療機関の性病検査は最終的には必須となります。
性病検査キットとクリニックでの性病検査との違い
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性病検査キットの検査 |
クリニックの検査 |
時 間 |
郵送の手間と時間がかかるが比較的短時間で結果が得られる |
即日検査結果がわかる性病もある。検査センターでの結果が出るまで検査キットと同じ時間が必要 |
内 容 |
限定される |
多岐にわたった検査が可能 |
信頼度 |
症状と検査結果が必ずしも一致しないため検査していない性病感染は否定できない |
医師が診察を行うため誤診が少なく検査結果や診断の信頼度が高い |
治 療 |
すぐに受けられないため治療が遅れてしまうことがある |
即日から治療が可能 |
正確性 |
検査センターでの検査のため正確 |
検査センターでの検査のため正確 |
近年では医療機関監修の性病検査キットもあり、医療機関で受ける検査方法と変わらない方法で検査ができることもありますが、専門医が総合的に診断するクリニックの性病検査は、ただ単に検査だけを行うだけでないため、潜伏期や疑陰性・疑陽性の可能性も少なく、患者様にとって多くの正確な情報や診断結果が得られます。
性病検査キットを使用した場合、検体を採取し指定の宛先に郵送します。
到着後、販売メーカーは以下のどちらかの方法で検査を実施します。
1.登録衛生検査所に委託
2.自社の検査所で検査
タイムラグが少ない『2.自社の検査所で検査』している性病検査キットは、外注費が抑えられ性病検査としては有利です。
精度に関しては、ほとんど差はありません。
ただし、性病検査キットはあくまでも検体採取した結果の情報のみであり、医師の診断とは異なります。初診時に完全な診断がつかなくても、医師は問診・視診などから性感染症の可能性を診断します。
性病検査キットの正確性は、潜伏期、偽陰性・疑陽性の可能性を排除できないため 精度がクリニックの検査結果と比較して落ち、潜在的な性感染症を見過ごす可能性もあります。
特にクラミジア・淋病・梅毒・HIVなどは、合併する割合も少なくなくそれぞれ検査結果判定時期も異なり、慎重かつ専門的な知識の下で検査を行うべきです。
クラミジア・梅毒・HIV抗体陽性のようにほとんど症状が出ず、経過してしまう性感染症もあり、1回だけの検査結果の判断を自分で下すことのリスクは大きく、性病検査キットを使用した検査はあくまでも目安であり、結果が陰性であるからと言って絶対に大丈夫とは言い切れません。
また、検体採取も自分で行うため不備が生じてしまう可能性もあります。医師が採取するクリニックでの性病検査と違い、トラブルが起きやすいのも事実です。
性病検査キットの限界
性病検査の結果だけで判断することは極めて危険です。
偽陰性の場合はそのまま性病が進行したり、他人へ感染させたりと、取り返しのつかない事態になります。
特に潜伏期に検査を実施し、陰性と結果が出た場合、その結果を鵜?みにして他人へ感染させる可能性が大きな問題となります。
また、治療の開始時期が大きく遅れてしまったり、日常生活での注意事項等のアドバイスをすぐに専門医から受けることができません。
スクリーニング検査との考え方がありますが、結局最終的に医療機関で治療を受けることになれば再検査が必要になります。
採取
検査の信頼度
潜伏期
他疾患の可能性
いずれも検査キットでの大きな問題点であり、決してクリアできるものではありません。
このような自分で手軽に行う性病キットが誇大広告によって普及してしまうと、大切な治療の時期を逃したり、誤診に繋がり性感染症拡大にもつながっていく可能性もあります。
もし症状が出ているにも関わらず、検査と同時に治療を受けることができないことは、患者様にとって大変なデメリットであり、性病検査を待って治療を受ける場合でも、医療機関へ診察に行けば、同様の検査をほとんどの医療機関では初診時に行い、性病検査キットでの検査費用が無駄になってしまうことになります。
性病検査キットによる検査結果の精度は、検体さえ正確に採取できれば。医療機関での性病検査とほぼ同じと考えてもよいかもしれませんが、今後の経過・治療・病状の進行度など、患者様にとって必要な医療情報を十分に得ることができません。
性感染症専門員という医療に関する国家資格を持たず、十分な医学的知識を持たない方が相談を受けている場合もあり正しい診断が遅れてしまう可能性もあります。
性病検査と治療、そして医師による診察は必ずセットである必要があります。
正しい診断、正しい治療のためにも性病検査キットに頼らず、専門の医療機関での診察・検査を受けられることをお勧めいたします。